建物について
来迎寺の本堂・客殿・庫裏は、平成25年(2013年)に本格的な伝統木造の建築として建て替えられました。
築300年以上を経ていた建物を解体するにあたって、新しい建物も同じように永く継承されるべく木造構法を選択し、地域に親しまれた雰囲気を残しつつも、「平成時代の和様寺院」としての意匠、空間、性能を目指しました。
本建物は、寺院本堂、客殿(広間)、庫裡(住職住居)が一体となったものです。とくに本堂部分は主に国産ヒノキ材を用いた本格的な伝統木造構法で作られていますが、細部の意匠は古来の様式にあまり拘らず、構成としても明るく開放的な内部空間としました。また一般的な飾り金物や浮彫などの装飾要素を用いないかわりに、伝統木造の柱・梁組みの複雑さそのものによって全体意匠を構成しました。照明や空調も現代的な性能を備える一方、屋根は銅板葺きとし、内外の木部には伝統古色塗料の久米蔵を塗っています。54面におよぶ襖絵は版画家の井出創太郎氏による作品です。
これまで現代性が積極的に採り入れられてこなかった伝統木造寺院建築に現代建築の技術と意匠を融合させ、平成時代に建立された寺院として後の世に伝えうる「和様」を追求しています。
- 関係者概要
建築主 宗教法人 来迎寺
設計・監理者 山本想太郎設計アトリエ
(担当:山本想太郎、齊藤利佳)
構造設計者 増田建築構造事務所 (担当:越智隆浩)
設備設計者 テーテンス事務所 (担当:村瀬豊、真野智敬)
照明設計者 中島龍興照明デザイン研究所
(担当:矢次めぐみ、厚東宏枝)
襖絵制作 井出創太郎(版画家)
施工者 株式会社 佐藤秀
(現場責任者:加藤宏之、棟梁:後藤福美)
機械設備:近代住機株式会社(担当:深山由紀夫)
電気設備:株式会社エムテック(担当:田島修司)
●敷地概要
住所 千葉県松戸市松戸2175番地
用地地域 商業地域
防火地域 準防火地域
全面道路 市道6-382 幅員2.73m(2項道路)
敷地面積 499.95㎡(計画部分)
建蔽率/容積率 80% / 400%
- 計画概要
用途 寺院、住宅 (新築)
構造 木造 地上2階建
基礎 鉄筋コンクリートべた基礎、浅層地盤改良
建築面積 342.83㎡(計画建蔽率68.58%)
延べ面積 392.70㎡(計画容積率78.55%)
(1階320.47㎡、2階72.23㎡)
(寺院244.98、住宅147.72)
高さ 最高高さ8.64m、軒高さ6.48m
設備 電気設備、照明設備(LED)、都市ガス設備、上下水設備
換気設備、冷暖房設備、給湯設備、厨房設備(ガス)
機械式警備設備、電話・インターホン設備
自然排煙、消火器
設計期間 2009年8月~2012年11月
工事期間 2012年12月~2013年12月
- 仕上概要
外部仕上 屋根:銅板一文字葺、瓦棒葺
外壁:杉下見板厚18mm張、古色塗装(久米蔵)
化粧構造材:ヒノキ、ヒバ(本堂)、スギ(庫裡)
開口部:アルミサッシ、木製(ヒバ)防火サッシ(森の窓)
内部仕上 本漆喰塗(本堂)、人工珪藻土塗、合成樹脂塗装等
外構 御影石張、砂利敷